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住民監査請求において、請求人が求める措置の類型は、地方自治法242条1項に定められていますが、実際には、請求内容において求める措置の内容がいかなるものであるかは、住民監査請求の要件審査においては、問題とはなりません。
本項は、「住民監査請求の対象事項の特定」とも関連します。「2 違法・不当な財務会計行為及び怠る事実 概説」4(3)ア、「2.2 財務会計行為の特定」3(2)も参照下さい。
1 地方自治法の規定
地方自治法242条1項では「普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実・・・があると認めるときは、・・・監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる」と規定しており、これによる限り、請求人が請求において求め得る措置の内容は、これら類型に限定されるようにも見受けられます。
2 求める措置の請求内容の要件審査における位置づけ
この点については、次の最高裁判例が、考え方の基準となります。
【判例】 最判平10.7.3集民189.1
・・・住民は、監査請求をする際、監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して、必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく、仮に、執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも、監査委員は、監査請求に理由があると認めるときは、明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができると解される・・・ |
つまり、請求人は、請求内容に監査の対象とすべき財務会計行為等を特定すればよく(「必要な措置を講ずべきことを請求す」るとは、文字通り、「別紙支出命令決議書により支出された○○支出は、○○により違法なので、必要な措置を講ずべきことを求める」と請求書に書いてあればよいということです)、監査委員に求める措置の内容や、措置の相手方が誰かを具体的に明示する必要はないのであり(この点、請求の趣旨を明示しなければならない(民事訴訟法133条2項2号)住民訴訟と異なる)、仮に請求内容に、監査委員に求める措置等が明示されていても、監査委員はこれに拘束されず、監査結果では、その裁量において、必要と考える措置を勧告できることになります※、※※。
※ 松本逐条242条関係では、「監査委員の勧告の『必要な措置』とは、一般的には、請求人の請求内容である必要な措置を指すものであるが、監査委員は、必ずしも請求人の請求内容に拘束されず、これを修正して必要な措置を勧告することもできるものと解すべきである」とし、請求人の請求内容に一定の配慮を示しています。条理上の問題として、然るべき結論であると考えますが、その上で住民監査請求は、民事(行政)訴訟と異なり、請求人の特定した請求を容認するかしないかの判断を行うことを、主たる目的とする制度ではないことに留意すべきです。 |
※※ 参照:「6 その他の請求要件」2(1)ア。 |
したがって、本稿における結論としては、請求内容において求める措置の内容がいかなるものであるかは、住民監査請求の要件審査においては、問題とはならない、ということになります※※。
※※ ただし、このことは、請求に示される措置要求内容が不明瞭である場合や、地方自治法242条1項所定の類型から外れ、監査委員にも勧告不能な内容である場合に、補正を求め、または請求人の意図を確認する等の対応を取ることを排除するものではありません。なお、補正を求めたとしても、これに応じない、または補正の結果がやはり趣旨不明なものであったとしても、それのみをもって請求を不適法とすることは、上記の最高裁判例の趣旨を踏まえれば、不適切であると考えます。要するところ、そうした措置は、請求人の意図をより明瞭にし、適切な監査を行うための品質管理的行為とみるべきです。。 |
この枠組みは、次のような理由によるものと考えることができます。
住民監査請求制度は、自治体財務運営の自浄的な適正化を図るための制度としての側面があること(最判昭62.2.20民集41.1.122は「住民監査請求の制度は、住民訴訟の前置手続として、まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は当該怠る事実の違法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とする」という)、監査委員が当該自治体の執行機関の一つとして、当該自治体財務運営の適正化のための裁量的措置(行政権の行使)を行う権限を付与されていること、さらに住民監査請求によって問われる財務会計行為等の違法不当性は、請求人個人の権利利益には直接の関連がない事項(つまり請求人は、全住民の代表として請求人として立候補しているに過ぎない)であることを考慮すれば、住民監査請求は監査委員の監査権限発動の促し、というのが本質(となれば、請求人の特定した監査対象財務会計行為等の範囲に監査委員は当然拘束されるが(その対象財務会計行為等に対しては監査を義務付けられる)、その監査結果をどのように整理するかは監査委員の裁量であり、監査委員が請求人の主張に拘束される必然性はないということになる)であり、提起された住民監査請求を通じて、監査委員がその考えるところに基づき、自らの裁量により、住民監査請求の請求人の請求内容に拘束されることなくその判断および関係機関等への措置要求ができるという制度の建付け方には、合目的性があるといえるのです。
そしてその前提下では、請求人が求める措置内容や措置の相手方を明示することは、請求の適法要件ではない、ということに帰結するのです(無論、監査委員の判断を請求人の請求の枠内に局限させる建付けもあり得たでしょうが(地方自治法242条5項の規定は、そのように建付け解釈することも不可能ではないでしょう)、すくなくとも最高裁はその考え方をとっていないことになります)。
若狭湾三方五湖の近所の小半島の突端にて。ゴハンの美味しそうな船宿がいくつもあり、実際そうした船宿のひとつに泊ってみました(食い切れん位の高級魚グジの祭典)。ところでここに行ったのは、BSPの火野正平さんがチャリであちこち訪れる番組で三方五湖辺りを走った際、御本人直の指名で(普段はそんなことはしない由)決まった昼食場所、湖畔のウナギ屋に行ってみたかったから(太秦の撮影所関係者には有名らしい)。