本サイトは、複数の項目(Webページ)から構成されています(総論、住民要件、財務会計行為要件、怠る事実要件、監査請求期間、違法性の承継など)。内容一覧(目次)はサイトマップ(メニューバーにもサイトマップへのリンクあり)を御覧下さい。

また、解説編全体の集約版(別に起稿したもの)を こちら に掲載しています。

★上記各稿の最終改訂日 2024.5.3-7(改訂履歴のページ参照)★

 

■本サイトの趣旨

 このサイトは、住民監査請求制度のうち、監査請求を取り上げて監査を行う必要があるかどうか、という住民監査請求の請求要件に限定して、その内容を解説するものです。

 住民監査請求制度は、住民訴訟制度と合わせ、地方行政において多く活用されています。中には重要な憲法裁判などの事例もあり、我が国の行政全般に大きな影響を与える重要な制度と言えるでしょう。

 ところで、担当者の方ならご存知でしょうが、住民監査請求がなされると、監査委員側では、まずこの請求が、地方自治法の定める要件に照らして適法なものか、という要件審査を行い、適法なものについて、監査を行うことになります。住民監査請求によって問われる事案の内容は、土木、教育、保健福祉等の目的別においても、報酬給与、旅費、交際費、需用費など性質別においても、さまざまなものがあり、それらの適法性・正当性を判断する根拠法規等も非常に広範囲のものとなりますが、どのような住民監査請求であれ、すべての請求に対して、本体の請求内容について監査に着手する前に、まずは地方自治法242条の規定によって、共通のルールに従い監査を行う必要があるかどうかの要件審査を行うことになります。

 ところでこの要件については、地方自治法の規定が概括的であるため、多くの最高裁判例を通じ、緻密な判断基準が形作られています。しかしこの判断基準は、自治体の実務担当者にとっては、専門性が高くわかりにくいものも多いため、監査委員や担当者は頭を悩ませているものと思います。実際、筆者は短期間ながら住民監査請求を担当し、またやはり短期間ながら法制審査や市町村支援の仕事を行う中で、住民監査請求の相談を受けたものですが、実務的な見通しの悪さ、法論理的に精緻かつ高度に技術的であるがための分かりにくさには悩まされたものです。

 しかし、総務省の資料※によれば、平成30~令和2年度の住民監査請求のうち、都道府県分350件(取下分含む。市町村分に同じ。)中却下(住民監査請求の請求要件を満たさないと判断されたもの)は214件、市町村分2,340件中却下は1,264件と過半を占めています。また住民訴訟においても、本体の問題の前に、まず適法な住民監査請求を経たのか、の論点が争われることもしばしばで、こうしたことからも、要件審査の問題は軽視できないことがわかります。

※ 住民監査請求及び住民訴訟に関する調 地方自治月報60号(総務省) 同省Webサイトから

 そのためこのサイトでは、とりわけ法律実務に詳しい職員が少ない団体の方々の実務の参考となり、実務負荷の軽減を図れるよう、最高裁判例や既存の総務省の見解に沿いつつ、住民監査請求の要件審査の法制的な仕組みについて実務的に有用となる(特に、法技術的に精緻で専門性の高い判例集積の中味を実務的な立場から交通整理することで)情報を提供し、説明することを目的として作成しました。

 なお本サイトは、要件審査の判断の参考となる法制上の仕組をできるだけ実務担当者にとって分かりやすく説明することを主眼・目的としておりますので、住民監査請求制度全体の建て付け・仕組みを分かりやすく説明することや、実務的な事務の進め方に重点を置いているわけではない点は御了解下さい。そうした点は、実務参考書等が公刊されているので、そちらをご覧頂ければと思います(住民監査請求制度全体の建て付けをまず概観し理解したいのであれば、下記参考文献のうち、田中孝男「平成29年改正 住民監査請求制度がよくわかる本」の第1章をまずご覧になられることを、筆者はお勧めします)。

 いずれにしても、こうした観点から作成した資料ですので、専門用語などの使用や講学的な論旨記述は、できる限り避けるようにしました(そうなっていないところもありますが、その点は御容赦下さい)。

 また、記述内容については、実務担当者が利用することを考え、可能な限り論点・争点に対する結論を明示するようにし(論点・争点に対する対応のあり方を曖昧とすることを避け)、その結論にいたる理由・論旨を、煩をいとわず記載するようにしています。住民監査請求の要件審査においては、他の行政分野での判断同様、「この場合はこうしなければならない」という場面はまずなく、法律や判例は、一定の判断の幅を持たせており、その中で事案にそくして、より適切妥当な結論を監査委員は判断すべきなのですが、とりわけ少人数で広範囲の業務を担当する市町村の監査委員(事務局)ができるだけ効率的に業務執行できるようにという観点からも、監査委員側に判断の下駄を預けるような記述は、そうすべき箇所はともかくとしても、そうでない場合はできるだけ避けるようにしました。

 また、その点から、複数の個所で同じ論点の説明を要する場合は、説明記述が重複することを避けていません。以上の理由から、記述が煩雑となっている部分もあろうかと思いますが、御宥恕頂ければとおもいます。

 このサイトの情報は、現在のところ必要な全項目を網羅できていませんが、少しずつ内容を拡充・充実していきたいと考えています。なお将来的には、下記のほか、住民訴訟(住民監査請求)の本案の問題ですが、おそらくは関係者の関心の最重点事項である、住民訴訟における公金支出にかかる裁量権の限度(判断枠組みと適応)について、原稿を作成したいと考えています(ただし現在のところ、資料調査等の時間が取れないため、目処がついてません)

 関係者の方々の業務の一助となれば、幸いです。また住民監査請求の請求要件は住民訴訟の訴訟要件とほぼ重なっており、住民訴訟の実務を担う方の参考となればとも考えております。

■あらかじめ

本文のうち、参照資料の引用部分は「青字」で示しています。

■主な参考文献

(主に県立・指定市立図書館で利用できるもので、平成14年に要件審査に関する重要な最高裁判決がいくつか示されたことや、住民訴訟制度に係る法改正があったなども考慮して、比較的最近出版されたものを主に参照しています)

【行政法・地方自治法に関する基本書】

田中 二郎 「新版 行政法 (全訂第2版)」 弘文堂 (上:1974年・中:1976年・下:1983年)
   引用:「田中 上・中・下」

塩野  宏 「行政法」 有斐閣
 (Ⅰ(第5版補訂版、2013年)・Ⅱ(第6版、2019年)・Ⅲ(第5版、2021年))
   引用:「塩野Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」

宇賀 克也 「地方自治法概説 (第10版)」 有斐閣 (2023年)
   引用:「宇賀自治法」(Kindle版を参照)

藤田 宙靖 「行政組織法 第2版」 有斐閣 (2022年)
   引用:「藤田」

松本 英昭 「新版 逐条地方自治法」 学陽書房
   引用:「松本逐条」
(自治体職員がまず参照する資料ですが、法改正に伴う版の改訂が頻回であり、多くの団体は最新版を備えると思われること、一方で既存条項の解説には基本的には変更がないことを考慮し、引用においては、特定版の頁ではなく、当該条項を記載します。なお本稿作成時は第9次改訂版(2017年)を参照しています)

松本 英昭 「要説 地方自治法 (第十次改訂版)」 ぎょうせい (2018年)
   引用:「松本要説」

【住民監査請求・住民訴訟制度に関する実務書・概説書】

井上 元 「実務法律学全集第10巻 住民訴訟の上手な活用法」 民事法研究会 (2009年)
引用:「井上」

碓井 光明 「要説 住民訴訟と自治体財務(改訂版)」 学陽書房 (2002年)
   引用:「碓井」

奥田 泰章 「自治体職員のためのQ&A住民監査請求ハンドブック」 ぎょうせい (2017年)
   引用:「奥田」

園部 逸夫編 「最新地方自治法講座4 住民訴訟」 ぎょうせい (2002年)
引用:「最新地方自治法講座」

田中 孝男 「平成29年改正 住民監査請求制度がよくわかる本」 公人の友社 (2017年)

伴 義聖・山口 雅樹 「新版 実務 住民訴訟」 ぎょうせい (2018年)
   引用:「実務住民訴訟」

松村 享 「紛争リスクを回避する 自治体職員のための住民監査請求・住民訴訟の基礎知識」  第一法規 (2018年)
   引用:「松村」

 各ページで紹介する下級審裁判例は、上記の文献および下の判例行政法に掲載紹介されたものを基本に、取捨選択しています(上記文献に紹介されなかった裁判例の追加もある)。

【判例解説(主なもの)】

小早川 光郎・青柳 馨 編 「論点体系 判例行政法3」 第一法規 (2016年)
   引用:「判例行政法」

磯部 力・小幡 純子・斎藤 誠 編 「別冊ジュリスト 地方自治判例百選 (第4版)」 有斐閣 (2013年)
   引用:「地方自治判例百選4版」

小幡 純子・斎藤 誠・飯島 淳子 編 「別冊ジュリスト 地方自治判例百選 (第5版)」 有斐閣 (2023年)
   引用:「地方自治判例百選5版」

宇賀 克也・交告 尚史・山本 隆司 編 「別冊ジュリスト 行政判例百選Ⅰ・Ⅱ (第7版)」 有斐閣 (2017年)

斎藤 誠・山本 隆司 編 「別冊ジュリスト 行政判例百選Ⅰ・Ⅱ (第8版)」 有斐閣 (2022年)

「ジュリスト増刊 最高裁 時の判例」 有斐閣 (Ⅰ:2003年(Ⅱ~Ⅳは行政法以外)・Ⅴ:2004年・Ⅵ:2010年・Ⅶ:2014年・Ⅷ:2018年・Ⅸ:2019年)
   引用:「時の判例(巻番号)」

「最高裁判所判例解説民事篇」 法曹会
   引用:「最高裁判解(年次)」または「調査官解説」

【行政実例等】

地方自治制度研究会 編 「地方財務実務提要」 ぎょうせい
   引用:「地方財務実務提要」
なお、皆さんご承知の通り本書は加除式であり、頻回の加除があるため、引用時は、頁は特定せず項目までの特定としています。本書の性格上、特段の事情なく内容が変更されることはあまり考えづらいところではありますが、上記の事情から、本サイトで引用・参考とした本書の版は古いものとなっていることは十分考えられますので、念のため御留意下さい。

地方自治制度研究会 編 「地方自治関係実例判例集 普及版 (第15次改訂版)」 ぎょうせい (2015年)

【その他】

高木 光・宇賀 克也 編 「ジュリスト増刊 行政法の争点」 有斐閣 (2014年)

自治省行政課 編 「改正地方自治法詳説」 帝国地方行政学会 (1963年)
   昭和38年自治法改正に関する解説書である。 引用:「昭38自治法改正詳説」

高橋 和之ほか編集代表 「法律学小辞典 (第5版)」 有斐閣 (2016年)
   引用:「法律学小辞典」

 ※ 引用:参照資料文献の出典表示は、資料の特定に欠けないようにはしておりますが、本サイト利用者が自治体実務担当者であることを考え、簡略な表示にとどめる例も多いことを御了承下さい。

■Contact to  audit.tetchan (at) gmail.com

 関連する知見や新規情報等、関連する御意見が頂ければ誠に幸甚です(そうした情報に接することが難しい状況です)。
 なお個別の問い合わせには対応致し兼ねることを御了承下さい。

 

 オーディオ趣味・機器自作趣味があるわけではありませんが、ふとしたきっかけでDAC(Digital to Analog Converter)を自作することにしました。こちらはそもそもオームの法則程度の知識しかなかったので、数年がかりで電子回路の基礎から(簡単ですが)の勉強や、簡単なキット(完成基板をつなぐだけ)の制作からはじめて、さいごは主要部品以外全部品自己調達、周辺回路も全部自作、という難度高い基板(そうしたものを自分で開発し頒布されている方がおられます)に挑戦、もろもろの自作例も見ながら部品の調達をどうするのか調べて、結局2台製作しました。ICの0てん何ミリ間隔の足のハンダ付けなどには難儀しました。
 もともと耳が子供の頃から悪いし、いわゆる部品や配線工作なども素人ゆえ適当の極みではありますが、そうはいいつつもDACの心臓部、DACチップはハイエンドメーカーのフラグシップ機3桁万円にも使用されるようなシロモノであり、プラシーボ効果でルンルンで音楽を聴いています。そこそこの根気と時間はかかりますが、存外オームの法則しか知らないような人間でも、それなりのものはできるようです。むろんマニアの方の突き詰めたレベルには到底達しはしませんし、当方の聴覚能力を考えれば、あまり突き詰めても良く分らん、ということもあるのですが。